2018年8月
姿勢と呼吸 その3
自分のセンターを観察するための方法を一つご紹介します。
立位で、身体を前後に揺らします。
最初は、つま先や踵は浮かさずに、小さな動きで丁寧に行ないます。
息を吸いながら重心を前に移動し、吐きながら中央に戻します。
息を吸いながら後ろに移動し、吐きながら中央に戻します。
何度か行なって、つま先や踵が浮いてきたら、それに応じて、少しずつ動きを大きくしていきます。
そして、前と後ろのバランスを保てる限界の位置を観察します。
今度は、少しずつ振り幅を小さくしていき、ほとんど動きが無くなったところで一息つきます。
左右の重心移動も同様に行います。
いきなり「中央」と言われても、どこか分からないかも知れません。
揺れる振り子のように、相対するバランスの間には真ん中があります。
中点があるからこそ、風向きに合わせてどちらの方向にも揺れることが出来ます。
動作を行うことよりも、身体に目を向けながら、呼吸に合わせて動くことが重要です。
動きやすい方向と動きにくい方向はありますか?
緊張しやすい場所はありますか?
左右の足は均等に着けていますか?
動作を行う前と後で何か違いはありましたか?
どんな小さなことでも、自分の身体について何か一つでも発見があれば、大成功です。
自らのアンバランスを自覚できれば、少しずつ中央に近付けていくことが出来ます。
これまで、呼吸が姿勢や動作に与えている影響を見てきましたが、その逆も同様です。
例えば、手に力を込めて握ってみると、ほとんど息が吸えなくなることに気付きます。
握っていても、手の平の力を抜いてお腹の緊張が弛めば、息を吸い込めるようになります。
握る動作というのは、買い物袋を提げたり、フライパンの柄を持ったりと、日常生活でもよく見られます。
そうした普段の何気ない行動によって、呼吸の深さは左右されています。
生活している中で、同じ姿勢のままジッとしていることは稀です。
働いている時も、遊んでいる時も、休んでいる時も、その時々で姿勢を変え、様々な動作をしています。
そして、それに応じて呼吸の通りかたも変わっていきます。
いつも決まった状態で無ければ呼吸の働きを活かせないというのでは、意味がありません。
条件が変わってもその力を発揮するためには、日々の生活にセンタリング呼吸法を取り入れていくことが重要です。
それは、呼吸を基準として、自分の持つ能力を最大限に活用できるように身体を創り変えていくことでもあります。
姿勢は、見た目だけの問題ではなく、心身の状態がそのまま反映されています。
姿勢を整えることは、心身を整えることに繋がり、思いもしなかった所まで好循環に変わっていきます。
呼吸によって自分の内の芯を育て、健やかで美しい姿勢を目指しましょう!
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姿勢と呼吸 その2
試しに、胸の高さまでゆっくりと腕を上げてみてください。
その時、息を止めて上げたとき、吸って上げたとき、吐いて上げたときの違いを観察してみます。
それぞれ腕の上げやすさが変化することを感じられるかも知れません。
それらの違いは呼吸だけですが、身体に掛ける負担は大きな差となって現れます。
同様に、立位を保つ上でも、呼吸は大きな役割を果たしています。
心や体に滞りがあると、同じ場所に居着こうとする傾向が強くなります。
「不安定」と比べれば「固定」のほうが安心感があるためです。
けれども、それが積み重なると、どんどん自分の可能性を狭めていくことになります。
それは、自ら固い鎧を身に着けているようなものです。
重く窮屈な鎧は、自由に動くには適しません。
鎧を脱ぐためには、それに代わる支えが必要です。
それが、身体の中央を通る「芯」です。
一般的な深呼吸は、息を大きく吸い込んで、胸部を膨らませます。
通常の呼吸よりも胸郭が大きく外側に広がりますが、内部は圧力が下がって空虚になります。
「センタリング呼吸法」では、息を吸うことで中央に締まっていく働きが起こります。
理科で習った作用と反作用のように、中央に集まった分だけ、外側に広がる力が生まれます。
中央の芯が細く長く伸びたものが、いわゆる「軸」だと考えます。
普段からセンタリング呼吸法を心掛けることで、身体に軸が生まれ、良い姿勢を保つための基準が出来ます。
一口に呼吸と言っても、息の吸い方、吐き方には色々あります。
口から息を吸うと、身体に力が入り、呼吸が浅くなります。
鼻から吸って口から吐くと、せっかく生まれた芯が無くなり、軸を保つことが出来ません。
センタリング呼吸法では、呼吸は鼻から吸って、鼻から吐きます。
息を吸うことで中央が締まって芯ができ、ゆっくり静かに吐くことで深い脱力が得られます。
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姿勢と呼吸 その1
綺麗な姿勢になりたいと望んでいる方はたくさんいます。
けれども、どうすれば姿勢が改善するのか、何を基準にすれば良いのか分からないという方もおられると思います。
そこで今回は、「良い姿勢」とはどのようなものかを考えてみます。
一般的に、立っているときに働く筋は「抗重力筋」と呼ばれます。
重力に対抗して立位を保つための筋と言う意味ですが、本当に筋力だけで姿勢は保持されているのでしょうか。
人の身体が、重力に引かれて静止している物体と同じなら、そうした考え方も成り立つかも知れません。
単なる物体と違うのは、生体は呼吸をして、バランスが変化していることです。
それでは、足を揃えて真っ直ぐ立ち、自分の身体を観察してみましょう。
足の裏のどこに重心が掛かっているでしょうか。
身体はどちらに向かっていくでしょうか。
脚のどこかが緊張していないでしょうか。
その状態は、ずっと同じままでしょうか。
分かりにくい方は、目を瞑ってみると、そうした変化をもっと感じやすくなります。
身体は、じっとしている時も、完全に静止している訳ではなく、常にバランスが変わっています。
筋は収縮し続けることは出来ず、弛んだ状態で最も力を発揮します。
また、筋や腱には張力や伸びを察知して、筋の緊張を抑制したり、自分の現状を感じ取るセンサーとしての働きが備わっています。
全身の筋が緊張したり弛緩したりする中で、一方向に片寄っていかないように、バランスを取り続けています。
「安定」は、「固定」と「不安定」の間にあります。
一ヶ所に留まろうとしても、身体を「固定」することは出来ません。
一方向に片寄っていくだけだと「不安定」になり、端まで傾くとバランスが崩れます。
「不安定」な位置から、ブレを減らして中央に近付けていくことで、「安定」が生まれます。
このようなバランスの変化は、前後左右だけでなく、実は上下にも起こっています。
つまり、身体には重力で下方に引かれる力だけでなく、呼吸で上下に伸び縮みする力も働いていると言うことです。
「良い姿勢」は、固定された一点ではなく、そうした揺れ動く変化の中にあります。
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夏季休暇のお知らせ
8月15日は、休業日とさせて頂きます。
他は、通常通り営業しております。
よろしくお願いします。
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