姿勢と呼吸 その2
試しに、胸の高さまでゆっくりと腕を上げてみてください。
その時、息を止めて上げたとき、吸って上げたとき、吐いて上げたときの違いを観察してみます。
それぞれ腕の上げやすさが変化することを感じられるかも知れません。
それらの違いは呼吸だけですが、身体に掛ける負担は大きな差となって現れます。
同様に、立位を保つ上でも、呼吸は大きな役割を果たしています。
心や体に滞りがあると、同じ場所に居着こうとする傾向が強くなります。
「不安定」と比べれば「固定」のほうが安心感があるためです。
けれども、それが積み重なると、どんどん自分の可能性を狭めていくことになります。
それは、自ら固い鎧を身に着けているようなものです。
重く窮屈な鎧は、自由に動くには適しません。
鎧を脱ぐためには、それに代わる支えが必要です。
それが、身体の中央を通る「芯」です。
一般的な深呼吸は、息を大きく吸い込んで、胸部を膨らませます。
通常の呼吸よりも胸郭が大きく外側に広がりますが、内部は圧力が下がって空虚になります。
「センタリング呼吸法」では、息を吸うことで中央に締まっていく働きが起こります。
理科で習った作用と反作用のように、中央に集まった分だけ、外側に広がる力が生まれます。
中央の芯が細く長く伸びたものが、いわゆる「軸」だと考えます。
普段からセンタリング呼吸法を心掛けることで、身体に軸が生まれ、良い姿勢を保つための基準が出来ます。
一口に呼吸と言っても、息の吸い方、吐き方には色々あります。
口から息を吸うと、身体に力が入り、呼吸が浅くなります。
鼻から吸って口から吐くと、せっかく生まれた芯が無くなり、軸を保つことが出来ません。
センタリング呼吸法では、呼吸は鼻から吸って、鼻から吐きます。
息を吸うことで中央が締まって芯ができ、ゆっくり静かに吐くことで深い脱力が得られます。